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2011年1月23日日曜日

イェール大学ロースクール (8)- 試験

イェール・ロースクールは、イェールの他の大学院と少し違う学期カレンダーを持っているので、春学期は、(今年は)明日から始まります。1月5日から19日までは、秋学期の試験でした。私自身は、(客員研究員なので)試験を受けていませんが、傍から見ていて、ロースクールにおける試験がどのようなものか書きたいと思います。

某授業の試験は、午前9時から午後1時まで、大教室にて試験(持ち込み可)。教授は、12月の秋学期最後の授業で、「試験では、私(先生のこと)の説を展開しても読んでいて面白くないので、できれば、オリジナルな説を展開して欲しい」と仰っていました。日本の法学部の試験では、多数説や有力説等を覚えてそれを書くという形式が一般的なので、教授のこのお言葉には目から鱗でした。もちろん、オリジナルな説といっても、判例(注1)を引き合いに出しながら主張を展開していかなければならないのですが、オリジナリティ、個性を重んじるアメリカの伝統が法学教育にも出ていると感じました。(注1:米国はコモンローの国なので、大陸法の国のように成文法ではなく判例の積み重ねで発展してきたため。)
Self-scheduled という試験は、自宅にてオンラインでイントラネットにログインして、一定の期間以内の好きな日に試験を受けるものです。時間は決められていて、いったん、ログインしてから一定時間内(例えば、24時間以内)に、試験を受けるのです。
また、レポート形式もあります。

ロースクールのウェブページには、学期の授業内容が発表される日に、試験日や試験形式も同時に発表されます。

J.D.の一年生の場合は、最初の学期(秋学期)だけは、合格か不合格がつくだけで、優良可というような成績は実はつきません。成績がつかないといっても、みな、冬休み中、帰省先でしっかり勉強している様子でした。

2011年1月9日日曜日

イェール大学ロースクール (7)- 授業(2)

イェール・ロースクールは、少人数教育なので、J.D.の場合、一学年200人余りで、教室も小さい教室が多いです。講義(Sectionという)は100名ちょっとで、そのほかのクラス(日本でいうとゼミに近い)は6~15名ほどで、密度の濃い授業が行われます。
どの授業も、ソクラティックメソッドで、教授が学生にあてて、教授と学生、学生同士で活発に議論し、非常にインタラクティブです。
最初、法的な知識を持たない一年生が、いきなりソクラティックメソッドで議論することに対して、違和感を覚えました。法的バックグラウンドが何もないので、最初は学生の議論が法的議論になっていないと感じ、日本の法学教育のように、一方的な講義でひととおり法学というものを学んでから、34年生のゼミで議論したほうがよいのではないかと思いましたが、2か月くらいすると、しっかりした議論になってくるので驚きです。教授も、学生にあてながら、学生同士の議論を促します。
あらかじめシラバスやイントラネット等で、教科書で読んでくるべき量が指示されていますが、毎回100頁ほど読んでくるようアサインされます。大方の学生はしっかり読んできて、議論に参加するのです。教科書は、日本の法律の教科書よりもずっと分厚いもので、百科事典、広辞苑並の分厚さです。そのため値段が140ドルくらいするので、大部分の学生は、中古本を買って使っています(中古本の場合、先輩による書き込みもありますが、書き込みによっては重要な箇所がハイライトされているのでよいかもしれません)。

法学部というと、日本でも、単に条文を覚えるのが勉強と誤解されがちなのですが、日本の法学教育の場合は、法律行為、条文の解釈や学説(多数説、有力説、少数説)、主な判例等を学びます。例えば、憲法学では、基本的人権と統治について学び、各種権利・義務とそのコンセプト、判例を学びます。したがって、日本の法学教育の場合、学説や判例を学び、試験でもそれらを覚えることが求められます。日本のほか、ヨーロッパの国等、大陸法の国は大方このような感じで法学を学んでいると思います。
米国は、判例の積み上げにより法学が発展してきたコモン・ローの国なので、教科書には、とにかくケース(事案、判例)ばかりが書いてあります。事案を通して、原理や基準を学びます。イェール・ロースクールでは、とにかく教科書に書いてある事案を読み込み、自分の考えを述べたり、主張、説を打ち立てたりすることが求められます。いわゆる学説などは学びません。いかに、一貫した議論を打ち立て、正当化するかに力点が置かれている気がします。なので、「間違っている」主張というものはないのです。教授も、学生の主張に耳を向け、あらゆる角度から促したり、つっこんだりします。
日本の法学教育を受けた者からするとそれが一見難しく思えますが、米国の国際会議や世界におけるプレゼンスを考えると、これが米国の強みなのだと思いました。

イェール大学ロースクール (6)- 授業(1)

イェール大学(カレッジ)及び殆どの大学院は、(今年は)明日から授業が始まりますが、ロースクール(Law School) はまだ秋学期中で、今は秋学期の試験の真っ最中です。ロースクールの場合、春学期は、今年は1月24日から始まります。
ロースクールの某プログラムの客員研究員として今、研究していますが、秋学期は、ロースクールの学生に交じって、いくつか授業を聴講しました。J.D.(注1)1年生とのゼミ(週2回)、講義(週3回)、2-3年生とのゼミ(週1回)です。
私自身、学部、大学院修士課程と6年間、日本で法学を専攻しましたが、久々に学生と一緒に授業を受けることは大変新鮮で、勉強になりました。これから数回に分けて、J.D.の授業の様子を少しご紹介したいと思います。

注1:J.D.Juris Doctor(法務博士)の略で3年間のコース。既に米国又は他国で法学部を出ている場合は、一年間のLL.M.Master of Laws; 法学修士のコース)があります。その他、いろいろコースがあるので、Yale Law SchoolHPをご覧下さい。

イェール・ロースクールは、U.S.ニュース&ワールド・レポート』ロー・スクールランキングでは、ランキング開始以来、毎年1位にランクされています。ビル・クリントン元大統領やヒラリー・クリントン国務長官も卒業生で、クリントン夫妻を教えたという教授もいます。
米国では、学部レベルで法学部がないので、みな学部では異なる科目を専攻してから、ロースクールに来ます。なので、歴史学科、英文科、心理学科、東アジア学科、生物学科等、バックグラウンドは様々で、全米、そして世界から優秀な学生が集まってきます(高校生くらいからロースクールに行くことを意識していたという言う人は、社会学や政治、歴史、哲学を専攻していた人が多いように思います)。学部を出たばかりの21歳の人から、大学院修士課程を出た245歳の人が殆どですが、一度社会人経験をして小学生くらいの子どもがいる40代前半の人もいます。

法律(law)を学びたいなら、「ハーバードに行け」と言われているくらいで、イェール・ロースクールは「理論」(theory)重視です。ビジネス系の授業もいくつかありますが、実用的な法律よりも、理論を重視した授業が多いです。

日本の授業というと、教授が講義をし、学生がひたすらメモを取るという一方向の授業が多いですが、ここでは教授と学生、学生同士の議論が活発で、授業が非常にインタラクティブ(双方向)であるせいか、居眠りしている学生を一度も見たことがありません。(「イェール大学ロースクール(7)」につづく)